数学的な珈琲

大切なのはプロセスか、結果か

 お茶の文化がある日本には情緒を重んじる世界があります。珈琲の世界にもこの情緒が多分に盛り込まれています。システムエンジニアだった私はこの情緒の部分にムズがゆさを感じました。情緒的表現は時として曖昧な結果を生みます。例えばプログラムの世界で「頑張って不眠不休でプログラミングしました!」っと言われても残念ながらデバッグして出力された結果が全てなのです。

 手挽きミルで挽いた珈琲は美味しい。一杯、一杯丁寧に。自家焙煎珈琲。少し間違うとこの表現は全て情緒的にしか過ぎなくなってしまいます。

 N.Yなどではハンドドリップは美味しいからではなく、廃棄などが少なく済み、効率が良いからと導入されています。ナポリの人気店では忙し過ぎて抽出方法は本当に適当です。情緒的な表現こそ日本の良さでもありますが、システム化が主流の昨今は流石に気になってきました。それは、普段のテレビやインターネットに流れる広告などが原因なのかもしれませんね。

スペシャリティ珈琲

 スペシャリティ珈琲。なんか凄いぞって感じですよね。一般の方にはその程度でいいと思っております。この言葉が一人歩きして、また利用されるのもなんだかなと思っておりますので。

実は、良い珈琲って日本にほとんど入ってこないんです。良い珈琲は欧米の大手に流れています。当店も初期の頃はイギリスから買い付けておりました。残念ながら日本人の多くは良質な珈琲の味にはまだ慣れていないから良い豆があっても良さがわかりません。でも、やはりお米の良さはわかったりするんですよね。やっぱり、文化でしょうかね。

スペシャリティ珈琲はほんの数パーセントの選ばれた珈琲で、その高い品質のために関わる人たちも手を抜けない、そんな珈琲です。

ピストンレバー式マシン

 当店のエスプレッソマシンは実は、50年前の旧式の構造を持ったピストンレバータイプのマシンです。このマシンを使うのは本当に骨が折れる作業で、最初の二年は買わなければ良かったと思っていたほどです。

ピストンレバーの最大の特徴は人が関わらなければ、考えなければいけない部分がたくさんある事。ハンドドリップの様に蒸らしや抽出速度を計算しないといけないからです。だからこそ、抽出者の思考や意志が示すことができるマシンだと捉えています。